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April 12, 2006

折り紙飛行機の暦史(模型航空史:6)⑥


折り紙飛行機の暦史(模型航空史:6)⑥:趣味際人

形態模型が多数派である日本の折り紙のなかでは希少な機能模型である点から、折り紙飛行機の外国ルーツ仮説も僅かながら考えられます。

筆者が直接聞いた話なのですが、第2次大戦前・中に少年期を過ごした、航空の知識のあるイギリス人は「折り紙飛行機」を「ペーパー・ダーツ」と呼び、良く知っていました。
ダーツはパブの室内スポーツとして広く行われている的あて競技ですが、このダーツ(投げ矢)は普通の飛行機よりもはるかに折り紙飛行機に似た形をしています。とくに、規格寸法の長方形の紙で折る、先が尖って後退角の大きい折り紙飛行機は、形が良く似ている上に直進性もよく、まさにダーツにみえます。
戦前当時、すでにペーパー・ダーツには協会のような組織があり、的あて、距離、滞空などの競技も行われていたそうです。本物のダーツ遊びも歴史があるようですから、起源はかなり古いと考えられます。「とんび」が発表された1901年よりは新しいのかもしれませんが、上述のようなある形式(長方形の紙から作った後退角の大きなもの)の折り紙飛行機のルーツである可能性はあります。

ただし、折り紙がヨーロッパなどに伝わったのは、日本の紙文化の一環としてのようでで、「とんび」よりも大分前と言われます。だから、ペーパー・ダーツそのものが日本の折り紙の影響を受けて誕生した可能性もあります。
なお、折り紙飛行機について、模型飛行機を良く知っている、年配のアメリカ人に聞いてみたところ、「ペーパー・グライダー」と呼んでいました。イギリス人の言うところの「ペーパー・ダーツ」との違いは、アメリカ語とイギリス語の差ではなく、前述のような特定の形の折り紙飛行機を「ダーツ」と呼んでいるようです。


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Comments

これはあまり知られていないことですが、「折り紙は日本独特の造形手段」ではありません。19世紀のヨーロッパにも折り紙の伝統がありました。そのような折り紙は、主に幼児教育分野の史料に記録されていますが、その中に折り紙飛行機が含まれています。
もちろん、折り紙飛行機が当時から「飛行機」と呼ばれていたわけではありません。例えば、1882 年に出版された The Kindergarten Guide Volume 2: The Occupations(Maria Kraus-Boelte and John Kraus 著)には "arrow" という名前で掲載されています。「ペーパー・ダーツ」という呼称もこのころからあったものと想像されます。
もっとも、この arrow は、正方形の紙を対角線方向に使うもので、形状は飛行機よりもダーツの矢にずっと似ています。そのため、厳密には折り紙飛行機とは言えないかもしれませんが、折り方は今日一般的な折り紙飛行機と同じですし、飛ばして遊ぶという点も共通しており、折り紙飛行機のルーツであることは間違いないと思います。
明治時代初頭、日本がヨーロッパから近代的な教育法を導入する過程で、ヨーロッパの折り紙も日本に伝わっています。江戸時代の日本の折り紙には紙飛行機は見当たりませんので、折り紙飛行機のルーツがヨーロッパにあることはほぼ間違いないだろうと考えます。

Posted by: 羽鳥 公士郎 | May 08, 2006 at 02:12 PM

折り紙飛行機の外国起源説について

お教えいただいてありがとうございます。
以前、NIFTYフォーラムで話題にしたことがあり、それを基にしたのが当ブログ記事です。
フォーラムの議論では、外国起源説は出ておらず(「折り紙は日本」という固定概念があた?)、
「ペーパー・ダーツ」の話は私が英国人から聞いたものです。
ほとんどが形態模型である日本の折り紙の中で、機能模型である「紙飛行機」は違和感が残っていたのですが、外国起源ということで理解が出来ました。

引用された文献 The Kindergarten Guide Volume 2: The Occupations(Maria Kraus-Boelte and John Kraus 著)は、英語のようですが、題名や著者名を見るとドイツ起源のように見えます。そのように考えてよいのでしょうか?

飛行機屋として細かいことを言えば、翼がそれなりの揚力を発生して、飛行に貢献するには、ある程度の縦横比(翼幅と翼弦の比率)が必要です。
例示された「arrow」の形を想像するに、幅(飛行方向に直角の寸法)が全長に比べて小さく、揚力面として働くには能率が悪い形です。
つまり、「矢羽」のように直進性を保つのが主な目的で、機体に重量を支えるには不適当な形に見えます。
従って、この段階で「滑空飛行」といえるかどうか疑問ではあります。

現在の「オヘソ型」折紙飛行機については、ブログに記載した滑空飛行測定のように、模型グライダーとして充分な性能を示しています。
多分、「arrow」の形が縦横比を大きくする(横幅が増える)方向に進化して、充分な揚力を発生してグライダーといえるだけの揚力を発生する形に至ったのだと考えます。
その変化は連続的なものですから、「矢」と「グライダー」の境をどこにおくか明確にはいえませんが、「矢」を祖形とする変化の過程として考えるのが正確かもしれません。

Posted by: 趣味際人 | May 09, 2006 at 11:15 AM

やはり、「矢」を折り紙飛行機と言うことには問題があるのですね。確かに、実際に折って飛ばしてみたところ、ほとんど飛びませんでした。直進させることすら難しい代物です。
引用した本についてですが、私の手許にあるのは、ニューヨークで出版されたものを Froebel Foundation USA という団体が復刻したものです。近代的な幼稚園はドイツの教育学者フリードリッヒ・フレーベルが作ったもので、この本は、アメリカの幼稚園教師や母親のためにフレーベルの教育法を解説しているものです。
したがって、幼稚園の起源はドイツですが、折り紙の起源がドイツであるわけではありません。折り紙自体は、ドイツだけでなく、フランス、スペイン、イギリスなどにもあったと考えられています。「矢」の起源がどこかというのは、現時点では分かりません。

Posted by: 羽鳥 公士郎 | May 11, 2006 at 01:15 AM

折り紙飛行機の位置づけ

筆者の切り口、当ブログの主題に沿うものとしては、折り紙飛行機は「模型航空」と「折り紙」の趣味際分野です。従って、折り紙飛行機が「飛ぶ」という機能を持つ機能模型であり、その機能が客観的・定量的に評価されるという見方が重要です。つまり、それを機能させたとき(飛ばしたとき)、何秒間、何m飛んだということで作品の優劣が評価されるわけで、外観の美醜や製作の巧拙は捨象されるということなのです。
上記は筋金入りの模型航空屋の極論といえるかもしれませんが、普通の人たちがさまざまな折り紙を行った場合も、形態模型や純粋な造形である多数派の折り紙作品に比べると、「折り紙飛行機」の評価は上記の方向にずれると思います。言い換えれば、作る(折る)という楽しみと、機能させる(飛ばす)という楽しみが等価・並列な活動なのです。
羽鳥公士郎さんの 
折り紙の歴史http://origami.ousaan.com/library/historyj.html  
折り紙の哲学http://www.origami.gr.jp/People/CAGE_/Philosophy/ 

については拝読しましたが、作品を機能させて評価するという考え方は希薄に見えました。

ホイジンガやカイヨワを起源とする「遊び論」の多くは分析的であり、筆者の切り口である「趣味際」、「システム・スポーツ」、「ホビー・スポーツ」(当ブログ4月28日~5月5日掲載「システム・スポーツ論」参照)といった、連続技・あわせ技による遊び方については触れていません。だから、羽鳥さんの上記論文の考え方が正統であり、筆者の「趣味際分野」の提唱が異端なのかも知れませんが、模型航空のような遊びを位置づけるためには「趣味際」のような切り口が必要だと考えます。
折り紙飛行機は、機能模型を作り、機能させるという、連続技の遊びです。上記の「折り紙論」や、筆者の乏しい折り紙の知識では、いわゆる「折り紙」の異端にみえ、日本の伝統的な折り紙作品群との間に違和感を持った次第です。折り紙飛行機がヨーロッパ系としても、いわゆる「折り紙」との間に違和感は残ります。

折り紙飛行機に特化した研究家・著書に次のものがあります。
「折り紙ヒコーキ進化論」 戸田拓夫
(2003・8・10日本放送出版協会 ISBN4-14-088076-7)
「日本折り紙ヒコーキ協会」ホームページ
http://homepage3.nifty.com/origami-plane

筆者の感覚としては、折り紙の分類の中に「スポーツ折り紙」、あるいは「機能模型折り紙」などの範疇を加えるべきだと考えるのですが。

Posted by: 趣味際人 | May 13, 2006 at 11:56 AM

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